A 農園 / 荒井 光夫さん

クリーンな環境で光合成の力を
最大限に引き出す
トマトのパラダイス A 農園 / 荒井 光夫さん

工場のように整然とヘルシーなトマトを安定生産

ハウス内に整然と並んだトマトのベッド。枝の先にはトマトの実が濃い緑色から、黄緑、黄色、オレンジ、赤と、熟成順にグラデーションに並んでとてもきれいです。茎自体はずいぶん高く伸びていますが、実はすべてちょうど取りやすい高さになっていますね。

荒井さん「これはハイワイヤー誘引という仕立て方で、高いところにワイヤーを通して、そこから紐を下げてトマトの茎を吊っています。トマトを収穫した後の茎は下におろして苗床のまわりに巻いていき、吊り下げる位置を先に伸ばしながら、取り終わったらまたおろしてを繰り返します。7月末日に苗を定植して、9月半ばから翌年の6月いっぱいまで収穫するのですが、最終的に1本の茎で20mほどの長さになります。トマトの実が常に人が立ったまま採れる高さに来るようにして、最後の頃には収穫している枝の根元はずーっと先の方にあるという状態ですね。トマトの種類は中央の通路を挟んで2種類作っています。1つは甘みと酸味のバランスが良く、ミニトマトの中では大きい方のL玉クラス。もう1つも粒はやや大きめで、甘みが強いタイプです」

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温室のプロが取り入れた人にもトマトにも最適なハウス

──天井が高くてきれいなハウスですね。その特徴や栽培方法について教えてください。

荒井さん「このハウスはオランダで開発された形で、ハイワイヤー誘引をするのに必要な高さが確保でき、また天井が高いということは換気効率も良くなります。トマト栽培には日の光が大変重要なのですが、これは小さい屋根が幾つも連なった連棟型温室で、この方が大屋根よりも採光性が良いんですね。屋根材もガラスではなく光線をよく通す硬いフイルムを使っています。ただし完全にオランダ式だと日本の台風に耐えられないので、日本の良い所と融合させて、もう少し丈夫に作ってあります。ここは完全溶液栽培で、培地にはロックウールを使用し、灌水チューブを使って水と養分を与えています。温度や湿度の管理を自動でコントロールして、常にトマトに最適な環境を整えているんです。恐れているのは虫が媒介する病気ですが、水耕なので万が一病気が出ても、その株のベッドだけ取り除けば済むという利点もあります。しかし農薬の軽減にもつながりますので、とにかく予防第一に努めています。天窓には病害虫を防ぐためのネットを張ってありますが、目合いが0.4㎜と家庭用の6分の1くらい細かいんですよ。

──ハウスの外に暖房用の燃料としてLPガスがたくさん並んでいますが、それだとかなり経費がかかるのでは?

荒井さん「そうですね。うちはもう50年トマト一筋でやってきていますが、私自身は建築家として長く外で働いていましたので、農家としてはまだ5年目です。トマト作りに関してはまだ両親に教えてもらいながらですが、家を継ぐにあたっては、環境にやさしい農業ということをコンセプトにしました。日本の温室の燃料は重油が主流ですが、これから先に永続可能な営農をしていきたいということで、燃料にしてもハウスにしてもこういう選択になりました。かなりの部分を自動化していますが、おいしいトマトを作るにはやはりきめ細かい観察や世話が必要で、肥料設計は全部手作りで自分なりのレシピで行っています。そこが当園の味になるのかと。天気にもよるのでなかなか難しいですが、目指すは甘さと酸味のバランスの良いトマトです」

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profile

A農園 / 荒井 光夫

栽培品目:ミニトマト

160年続く農家、50年前からはトマトを専門にしている。光夫さんは建築士として温室メーカーに勤務していたが5年前に脱サラ。温室のことは熟知しており、平成21年に最新の設備を備えた0.6haのミニトマト専用の温室を建てた。農業以外で得た知識とセンスで、荒井家トマト栽培の新たな夜明けを迎えている。