テンアップファーム / 森田 健介さん

味よし、色よし、栄養価も高く
子どもたちが喜んで食べるニンジン
「あかい五寸」と「京くれない」 テンアップファーム / 森田 健介さん

千葉県ニンジン生産の始祖

一大産地への道のり

千葉県のニンジン生産量は全国2位。市町村別でいうとテンアップファームのあるここ富里市が全国1位だそうです。しかし50年ほど前までこの辺りは落花生の一大産地であり、テンアップファームの親会社である森田商店は落花生の問屋として大いに栄えていました。それが一気に落花生からそれまで作ったことのないニンジンへと大きく舵を取ったのです。それにはこんな訳がありました。

当時アメリカとの間に農産物輸入自由化の動きがあり、落花生の自由化はほぼ確定的でした。その頃行われた政府の交渉の席に民間人としてただ一人、当時の森田商店の代表である森田さんのおじい様も同席していました。そしてその席で知った現実に愕然とします。当時千葉県一の生落花生取扱高を誇っていた森田商店でしたが、その一年間に扱う量はピッツバーグにある会社のたった1日に扱う量と同じだったのです。その後中国との国交正常化も進み、あっという間に落花生はアメリカではなく中国産という流れに。しかしその間、落花生がもう農家の主力作物にはなり得ないだろうと先を読んだおじい様は、時に変人呼ばわりをされながらも「ニンジンを作れ、ニンジンを作れ」と、当時千葉では誰も作っていなかったニンジン作りを推奨し、250件の農家を組織しました。

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果物のような甘みと食感
生でも調理しても映えるニンジン

総合農業商社である森田商店は、種苗会社との共同研究で良品作物の育種事業も行っていました。農作物の生産部門に当たるのがテンアップファームです。さて、ニンジンです。ニンジンの種は風で遠くまでとべるように細かい毛で覆われています。種まき一つにしても畑に定着させるための効率化が求められる、手間と経費のかかる作物でした。そうした課題を一つ一つクリアしながら、味の良さを追求した種の開発を続けてきました。一昔前までニンジンは子どもが苦手な野菜の代表でしたが、それは独特の青臭い匂いにあります。当時のニンジンの芯は黄色く、そこが匂いを強く感じる部分でした。子どもたちが喜んで食べるニンジンをと各種苗会社が研究するなか、森田商店で開発したのが芯まで赤い「あかい五寸」という品種。テンアップファームでは自社オリジナル品種の「あかい五寸」と、タキイ種苗が出している「京くれない」という、2つの特徴的なニンジンを作っています。

森田さん「『あかい五寸』の特徴は芯まで赤くてニンジンの臭みがなく、生でも美味しく食べていただけることですね。みずみずしくて歯触りもよく、果物のカキに近い甘さと食感があるので、お子さんたちも喜んで食べてくれます。『京くれない』は名前の通り鮮やかな赤色が特徴で、金時ニンジンのリコピンと西洋ニンジンのカロテンをバランスよく備えた栄養価の高いニンジン。こちらもニンジン臭が少なく、生色から加熱調理まで幅広くご利用いただいています。」

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こだわりの土作りで
甘くて体によいニンジンを

一栽培する上での苦労や特色などはありますか?

森田さん「この辺りは元々火山灰混じりの肥沃な土で何でも作れる土地柄ですが、昭和61年テンアップファーム設立当時、さらに土質を良くするために岩手県一関から、隆起した体積土を運び込みました。その土には牡蠣殻などの貝の化石が多く含まれ、植物が吸収可能な良質なミネラルをたっぷり含んでいます。さらに毎年大量の緑肥や有機物を投入し、土の豊かさを維持しています。当社で扱っている品種はどちらかというと病気に弱い方なのですが、土の健康を保つことで農薬の回数を減らすことを目標としています。またこれらの品種の特徴として形や大きさの揃いが難しく、寒さに当たると葉が開いてしまい機械掘りにさなくなるので、手掘りの期間が長くなるという栽培場の大きなデメリットがあります。それでも赤いニンジンをメインにするのは、消費者の皆さまに気に入っていただいているから。求められていないニンジンを簡単に作るよりは、たとえ手間がかかってもリピーターが待っていてくださるニンジンを作りたい、そのような気持ちで臨んでいます」

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profile

テンアップファーム 森田 健介

栽培品目:ニンジン

農業資材卸、育種事業などを行う総合農業商社森田商店の農作物生産部門を担うテンアップファーム。自社農場総面積13haを超える規模でニンジンの他にトマト、スイカ、玉ネギ、グリーンパパイヤなどを手がけている。社名はミネラル10%UPを意味し、おいしくて栄養価の高い野菜の生産にこだわりを持つ。